「群馬県公立高校入学者選抜制度の改善方針について(案)」に対する意見(2021年7月6日)

*「はじめに」について

 学校につどって教育を受けるのは、「人材」ではなく「人間」です。

 教育基本法にあるとおり、教育とは「豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成」を目的とするものであり、「未来を切り拓く人材の育成」などの用語に見える社会で役に立つか否かで子どもたちを取捨選別しようとする為政者本位の視点は、教育の本義とは相容れない考え方です。また、「始動人」なる珍妙な造語も、同趣旨の言葉として、そもそも公教育にはなじみません。


*「1 入学者選抜制度の現状と主な課題等」について

 まずは、真摯な反省と検証から始めてください。

 ここに列挙されている課題は、繰り返し現場から指摘されてきたことばかりであり、全県一学区制や前期選抜への学力試験の導入強行などこれまでの「教育イノベーション」がもたらした影響と課題を、改めて県教委は真摯に反省し検証する必要があります。そして、制度自体の欠陥を放置したまま子どもたちや現場の教職員に犠牲を強いてきたことの認識に立って、まずは精緻な制度設計と検査問題の改善に注力すべきです。


*「2 新たな入学者選抜制度の概要」及び「別紙 (新)公立高校入学者選抜制度」について

 検査問題の抜本的な改善が必要です。

 前後期二回の選抜を一回の本検査にすることには、基本的に賛成します。しかし、前後期選抜の趣旨を踏襲した「特色型」と「総合型」という二系統の選抜は、評価基準を複雑化し、合否判定をブラックボックス化する危惧があります。また、多面的評価を趣旨とするはずの「特色型」が短絡的に「部活動特化型」として広く県民に理解され、高校入試ひいては高校教育そのものが「勉強か部活か」の二区分に色分けされかねません。さらに、学校によっては多面的評価を標榜し部活動など学業以外の実績を必要以上に重視することで、結果的に中高生の中に学力軽視の風潮が醸成されます。これでは、県の掲げる「教育イノベーション」どころか公教育の崩壊へつながるものとして、到底看過することはできません。

 受検生すべてに課す学力検査と面接の実施は、一日目に五教科実施という圧縮された日程が採点ミスやトラブルの原因となるため、無理のない検査日程や方法に改めるべきです。

 何よりも、公平で公正な検査を行うためには、現行の検査問題の出題形式や解答形式の不備を全面的に改善する以外に方法はありません。県教委には、現行の検査問題に関する課題の検証と改善内容を明示した改善方針を早急に求めます。


*「4 その他」について

 全県一学区制が、群馬の教育にゆがみを生んでいます。

 学校間格差を助長し、子どもたちに過度な競争を強いる現在の全県一学区制を見直し、地域の子どもが地域の学校で安心して学べる小学区制を再構築すべきです。併せて、依然として残る男子校・女子校の共学化を含め、高校教育全般にわたる改革を早急に進めるべきです。

 そして、いままで現場の教職員の意見に耳を貸さなかった県教委の姿勢が現状の諸課題を生んでしまった原因であることを認識し、これからは具体的な選抜方法に関する現場からの提言や意見に真摯に耳を傾けるべきです。

                                                            (以上)

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