群馬県教委3月会議を傍聴して
・「都道府県・指定都市(新任)教育委員研究協議会」の報告が参加委員からありました。その協議会で「群馬県の教職員の多忙化解消に向けて【提言R4】」を紹介したところ、「持ち帰り業務」のデータが他県の委員から注目されたとのことです。このデータでは、小中学校で月当たり1回以上の持ち帰り業務を行っている教職員が7割以上いることが示されました。群馬県の「教職員の多忙化解消に向けた協議会」では、このデータに基づき「持ち帰り業務の縮減と記録の徹底」を協議したようです。
しかし、持ち帰り業務が発生するのは、ICTによる在校等勤務時間管理など「勤務時間の記録の徹底」によるところが大きいと考えられます。つまり、学校での勤務時間が制限されているために、学校でやることができなかった仕事を家に持ち帰らざるを得ないのではないでしょうか。持ち帰り業務は、時間管理がルーズな教職員の勤務態度や意識によるものではもちろんなく、多岐にわたる膨大な業務量によるものであることは明らかで、業務全体の抜本的な見直しと大幅な削減以外に、教職員の多忙化を解消する方法はありません。
・同じ「都道府県・指定都市(新任)教育委員研究協議会」で文科省担当者から、「土日に部活動指導員が配属されているのに教員もいるのはなぜ」との疑義が出されたとの報告がありました。
教員の負担軽減を目的に一部の部活動に配属されている部活動指導員ですが、土日の部活動を部活動指導員にすべて委ねることはできない現状や、部活動指導のさらなる補強のために部活動指導員がごく一部の部活動にのみ配置されている実態など、教員の負担軽減につながっていないことを文科省担当者はご存じないようです。
「学校の部活動を地域に移行する」との文科省の方針に対して、教職員の負担軽減の観点からも私たちに異論はありません。しかし、地域での部活動の担い手が充分に確保されていない現状や、部活動実績を評価に含む入試制度が広く行われている実態がある以上、「部活動の地域活動化」は到底実現しません。教職員の働き方改革とそれに伴う部活動改革を着実に進めようとするなら、文科省や教育委員会は多くの教職員からの声に真摯に耳を傾けた上で、長期的展望に立った制度設計を行い、惜しみない予算措置と人員配置をすることが必要です。
・県内の学校・園の統廃合についての報告がありました。その中に、給食調理方式をめぐり多くの地元住民や市議会で大問題となっている新設小学校の名前もありました。しかし、この問題には一切触れることなく簡単な報告のみでした。少子化により今後益々増加が予想される学校統廃合に伴い学校設備や職員配置・通学環境などが問題となります。これらの問題に対して、市町村立学校を含む全県の教育機関において学ぶ者の視点に立った教育が提供できるように、県教委は万全の努力を尽くすべきです。
・外国につながる子供たちの学びの支援サイト「ハーモニー」について情報拡充の報告がありました。これまで日本語指導など個々の教員に委ねられてきた学習支援を共有化することは有意義なことです。さらに、ある委員からの要望にあった「中学生以上へのコンテンツ拡充」を図ると共に、一刻も早く夜間中学の設立を要望します。
・ある教育委員が卒業式時の卒業生名簿が県内3割の高校で男女別であることに触れ、男女混合名簿をスタンダードとすることを要望しました。ジェンダー平等の観点から男女混合名簿にすることは当然ですが、現在3割の高校が男女別名簿であることに驚きました。男女別学高校があること自体も論外なのですが、男女別を当然とする「しきたり」や「意識」が群馬県に強く残っていることが問題です。
・「#教師のバトン」をはじめとして文科省や教委が教職の魅力発信に躍起になる一方で、教育現場の苛烈な現状が明らかになるにつれ、教職を志望する若者の減少が深刻です。事態は、「教職のプロモーション動画」などではどうにもならない所まで悪化しているのです。それにもかかわらず、文科省や教委が業務削減や増員など教職員の待遇改善に目を背ける状態を続ければ、早晩「教育崩壊」は免れ得ません。
・県教委のホームページでは、相変わらず定例会議の「会議録」の掲載が今年9月でとまったままです。(2月22日現在)。この事態は、今回の会議において非公開議案が全9議案中6議案を占めることとあわせ、情報公開の観点からも明らかに異状です。そして、「教育長は、教育委員会の会議の終了後、遅滞なく、教育委員会規則で定めるところにより、その議事録を作成し、これを公表するよう努めなければならない」とする「地方教育行政法第14条9項」に、群馬県教育委員会は明確に違反しています。
(以上)