群馬県教委6月定例会議を傍聴して
・教員選考試験の応募状況について
全体の志願者数は昨年度より106人減の1,679人で倍率は3.2倍(昨年度は3.6倍)とのことですが、この状況を担当課長は「昨年度から微減、一定の倍率は維持できたので、良好な選考ができる」とコメントしました。2018年度採用試験の2,341人(5.4倍)以降だけを見ても、2019年度2,299人(5.0倍)、2020年度2,114人(4.6倍)、2021年度2091人(4.6倍)、2022年度2,018人(4.9倍)、2023年度1,778人(3.9倍)、2024年1,785人(3.6倍)と志願者の減少が止まらず、決して安閑としていられる状態ではないはずです。
大学からの推薦を得て特別選考に応募する大学生が193人に増えたことが報告されましたが、昨年度のちょこっとコメントでも指摘したとおり、大学生の応募者を増やすためのこの方策が志願状況好転に有効かどうか疑問です。
それどころか、教員養成大学に通う大学生や教職課程を履修している大学生のうち、大学の推薦を得て受験する人が上記の人数に留まっている一方で、臨時的任用教員等経験者対象の特別選考に698人もの人が応募していることに注目すべきです。これは全応募者の実に41%を超える人数です。非正規雇用で群馬の教育を支える多くの人々が、日々の過酷な勤務をこなしながら試験準備に励んでいることが想像され、彼らの志望実現を願わずにいられません。
また、今回初めて行われる大学3年生を対象とした選考の応募者が270人だったことが報告され、例年の大学4年生の応募者数が約500人であることから、県教委はこの制度導入に大きな手応えを感じたようです。しかし、複数回受験をインセンティブとするこの制度としては、この数字がさほど多いとはいえず、逆に4年次で教職以外への進路変更に伴う採用計画上のリスクも考慮する必要があります。
企業のインターンシップのような体験の機会を教職でも設定できないかとの意見がある委員から出されました。教育実習という絶好のインターンシップが原因で少なからぬ学生が教職をあきらめる現実の中で、もう少し早期にもう少し気軽な体験を通じて教職を目指す学生を増やす意図のようです。しかし、このような取組は各大学ですでに試みられていて、受け入れる教育現場に更なる負担が加わっていることも事実です。子どもたちが教職を目指す理由のひとつに、自分が学校生活で接した先生たちの生き方や考え方によるものであることは今さら論をまちませんが、現在の教育環境の劣化がこうした先生方の姿を子どもたちから見えにくくしたり、変容させたりしていることが、教職志望者減少の真の原因なのではないでしょうか。
改めて、過酷な勤務実態により教員養成大学の学生でさえも教職を目指さなくなっているという現実を県教委は真摯に受け止め、目先の受験者増加をもくろむことより、教育現場の過酷な長時間勤務の解消に一刻も早く本腰を入れることを私たちは強く求めます。
・公立高校生徒募集定員の変更について
今回の各校募集定員などの変更は、各地区の中学卒業見込者数と各校の志願者数の動向、県全体のバランスによる選考によるものとのことですが、近年定員割れが続く高校が定員減になるのは仕方のないこととの受け止めがごく自然にされそうです。しかし、その延長には、再編整備と規模の適性化という一見合理的に見えて、その実あまりに酷薄な学校消滅もしくは廃校という現実が待ち受けているのです。今回減じた募集定員の合計は4学級の高校2校分の新入生の数に相当する320人ですが、中学卒業見込者数はそれを上回る538人で、来年度以降もこの減少ペースは続くようです。これに関して、会議の場での本質的な質疑が皆無だったことは、教育委員のこの問題に関する意識の程度を象徴しています。
去年6月のちょこっとコメントでは、第2期高校教育改革推進計画に触れて学級定員の引き下げを私たちは求めましたが、今回の20人減や8人減はそれを考慮・具現化したものともいえ、多少の評価はしたいと思います。ただ、生徒減は教員減に直結する話しであり、当面教員の加配をするにしても、このままでは小規模校はさらに厳しい状況に追いやられることは必定です。地域のインフラとしての学校がなくなることは、地域の更なる過疎化と地域コミュニティーの崩壊を意味します。
県教委自身による全県一学区制が招いたともいえる現在の状況を好転させるためには、やはり通学区制の再編成が必要であることを改めて私たちは訴えます。
・部活動の地域移行について
地域移行を協議する検討委員会の様子が報告されましたが、いつまでも個々の事例発表の域を出ないことに業を煮やした委員から、地域再生のための行政課題としての取組のテコ入れや民間企業との連携、進捗度合いの可視化などが提起されました。ただ、この問題は教員の多忙化解消に端を発したものとの認識を忘れてはならず、学修中心の学校教育の再構築と特異な部活動文化の歪みを修正する機会と捉える視点も必要です。 (以上)
2024.6.26