群馬県教委4月定例会議を傍聴して
・高校入学者選抜について
今回から大きく変わった高校入試制度について、選抜結果と生徒・保護者アンケート結果が報告されました。前後期二回だった選抜が一回に変わったことで、予期せぬトラブルが懸念されたものの、現時点で大きな支障は県教委には報告されていないようです。ただ、学力検査を一日で実施する日程や二系統の選抜方式など新たな制度に対して、ミスの許されぬ高校現場にとって大きな負荷が重くのしかかったことが想像されます。
各教科共に学習指導要領の趣旨に則り学習過程を重視した出題をしたとのことですが、平均点が前年度を14点下回った英語では得点分布が20点前半及び30点前半にピークがあり、選抜試験としての適格性を欠く出題と言わざるを得ません。この件について、担当課長からは「読解力・表現力における中学での習熟度の差」による「二極化傾向」との説明(前年度も前任者から同様の説明)がありましたが、80点後半と50点後半にピークのあった前年度の結果とは全く事情が異なり、客観的な分析に基づく検証と今後の改善が是非とも必要です。
新1年生約2800名、保護者約4500人の回答を集めたアンケート調査は、5項目中4項目が選抜日程に関するもので、いずれの項目でも今回の制度に肯定的な意見が多数を占めたようです。しかし、自由記述欄の「高校入試は初めて」「新制度しか知らない」「これまでとどちらの制度が良いか判断しにくい」などの意見に見られるとおり、このアンケート自体が受検生・保護者の視点とずれていることが明らかで、せっかく「高評価を得た」アンケートですがその結果の有効性には疑念が残ります。
県民が注目する高校入学者選抜ですが、それを統括する県教委には、先の検査問題の検証と併せて、これまで受検生を送り出してきた中学校や検査を実施した高校の教職員の意見に真摯に耳を傾け、制度をより確実なものにする責務があります。
・包括外部監査結果について
「県立学校を主とした教育施策に係る財務事務の執行及び事業の管理について」をテーマとした昨年度の包括外部監査結果が、群馬県のウェブページで3月29日に公表されました。県教委と利害関係のない包括外部監査人による290ページ余の大部の報告書では、県教委事務局各課及び県立学校13校(高校11校,特別支援学校2校)を監査対象として、昨年8月以降半年間にわたる監査結果と意見が詳細に記述されていて、大変読み応えのある内容です。
4月20日付の上毛新聞紙上でも「外部監査で県立高と県教委 是正・改善必要4件」の見出しでこの内容を取り上げ、法令や規則に違反するため是正・改善が必要な「指摘事項」が4件(内、県教委事務局2件、学校2件)、是正・改善の検討を求める「意見」が34件(内、県教委事務局21件、学校13件)あったことを報じています。
ところが、4月19日の県教委4月定例会議では、この外部監査の結果報告書に関して全く触れることはありませんでした。年度初めの多忙期とはいえ、地方自治法に基づき実施された監査結果に対して、県教委の基幹会議でのこの扱いにはただ呆れるほかありません。
教職員の労働対価の仕組み見直しや勤務条件の改善、学校運営上の問題点指摘など、すべての項目で非常に具体的で正鵠を射た監査結果は、次のURL(https://www.pref.gunma.jp/site/houdou/637022.html)を参照していただくこととして、先述のピント外れのアンケート結果の紹介や入学式の様子、生徒の活躍、各校の取組に対して「素晴らしい」「感動的」「素敵」などのほんわかした賛辞が飛び交うばかりの会議内容は、様々な問題が山積している現実の教育現場と完全に乖離しています。
県総務課では、この外部監査で示された「指摘事項」と「意見」のすべてに対応し、今年度中をめどに改善状況を報告・公表するとのことですが、少なくとも会議における緊迫感は皆無です。せめて、次回5月の定例会議でこの件が一言なりとも話題に出ることを微かに期待するばかりです。 (以上)
2024.4.25