・今回の学校訪問報告について
9/4の南牧村立なんもく学園と上野村立上野小学校への学校訪問について報告がありました。小規模校ならではの教育実践に、参加した委員から惜しみない賛辞が贈られていました。
特に、今年4月に義務教育学校として開校したなんもく学園では、斬新なコンセプトで設計された真新しい校舎に、児童生徒20名・職員26名が在籍しているそうです。そして、自然豊かな環境の中で自由な発想を育み地域と一体化した学校を目指す教育実践が日々行われているとのことでした。
確かに、小学校・中学校の枠組みや学年の枠組みを取り払った自由度の高いカリキュラムによる教育活動は、今後の学校像に大きな示唆を与えることでしょう。また、地元の木材を多用した校舎には、大きな図書スペースを中心に学習用の小部屋が配置され、校舎と一体化した体育館やオープンスペースなどを含めて、従来の学校では叶えようもない理想的な環境と言えそうです。
上野小学校では、授業に自由進度学習が積極的に取り入れられ、自らの学びを自らが設計して進める「自律した学習者」の姿が具現化されているとのことでした。
しかし、ある委員から今回の学校訪問で「10年後の学びの当たり前の姿を感じ取」った、との発言がありましたが、それには疑問を持たざるを得ません。なぜなら、現行の学習指導要領が自由度の高いカリキュラムの大きな支障となっていることと、なんもく学園のように地元自治体の全面的なバックアップを受けられるケースは稀有だからです。
現在、過疎化や少子化に伴う学校統廃合の動きは全県で見られ、それに伴う通学の支障を見こした一家転住などにより学校統廃合に一層拍車がかかる悪循環に陥っています。そして、それが山間部・平坦部の区別なく起きているのが群馬県の現状です。
教員一人あたりの子どもの人数が少ない少人数指導を前提とした両校のような教育実践を「学びの当たり前の姿」と考え「個別最適な学び」を実現しようとするならば、そのポイントとなる教員配置を抜本的に見直す必要があります。それは、国に先んじて群馬県が行っている「ニューノーマルGUNMA CLASSプロジェクト」(小一~中三の一学級児童生徒数30~35人)をはるかに下回る人数を基準とした学級編成とそれに伴う教員の大幅増員を意味します。これまでのような、児童・生徒数の自然減に任せた学級編成やTT体制の一部手直しなどで事足れりとせず、県下遍く「誰一人取り残さない」ための真の少人数教育実現を切望します。
ある委員から、隣県の学力調査の分析から「学級経営」が非認知能力・学習方略を向上させ、子どもの学力を向上させるとの報告がありました。教員一人ひとりが子どもと向き合いその可能性を十二分に育むためには、県の掲げる教育ビジョン実現にも有効な「教員の大幅増員」こそが唯一無二の方策である、と私たちは考えます。
・経産省の教育への関わりについて
8/21に行われた「学校活動支援サービス体験研修会in群馬」についての報告がありました。「働き方改革と民間サービスの活用」をテーマに今後の展望について行われたトークセッションでは、登壇した教育長が他の登壇者二人との話しから県の取組に間違いがないことを確信した、とのことです。
ただ、ここに参加した委員からは、経産省主催のこのイベントが教育産業に携わる企業の経営が立ちゆくかどうかに主眼があり、教員の働き方改革や労働時間短縮のためのスタンスには立っていない性格のものと指摘しました。
確かに、経産省が「未来の教室」「EdTECH」などの教育関連施策を矢継ぎ早に繰り出す昨今の情勢は、文科省による朝令暮改の諸施策を凌駕し、その基軸には国や企業の収益の多寡を念頭に置いた「人材育成」が常に意識されています。
そもそも、目の前にいる全ての子どもたちをじっくりと育む日々の営為と、収益をあげることが全てに優先する企業論理とが相容れないことは明らかです。それにもかかわらず、文字通り人を材料と見なす「人材育成」の御旗を掲げた群馬県教育ビジョンでは、一連の経産省による施策と連動しながら群馬の「教育改革」をすすめることが企図されています。そこに描かれた「自律した学習者」とは「国・社会・企業の求める有為の人材」に他ならず、「ウェルビーイング」とは「国・社会・企業にとって都合の良い状態」と解釈すると全てに合点がいきます。 (以上)
2024.9.26