群馬県教委8月会議を傍聴して

・教職員の多忙化解消について

 学校現場や教委での業務改善や「提言R6」を踏まえた取組状況についての「意見交換部会」が、県立学校・市町村立学校・市町村教委の3部構成で7月末にオンラインにより開かれたことが報告されました。

 県内全校をあげて毎日の在校等時間調査(教職員全員対象・毎月集計)や業務状況等調査(全校長および抽出教職員対象・年1回)が実施されるようになって久しく、これを踏まえた「教職員の多忙化解消に向けた協議会」からの提言が、学校向け・教委向け・保護者および地域向けに毎年出されています。

 これを「他県にはないすばらしい取組」と手放しで評する教育委員もいますが、学校現場が多忙化解消とはほど遠い実態であることは、約半数の教職員が「(働き方改革が)進んでいない・ほとんど進んでいない」と答えた昨年度の業務状況等調査から明らかです。また、在校等時間調査の結果上では時間外勤務の時間は減少してはいても、日々の指導に欠かせない授業準備や教材研究、試験の採点、成績処理を、勤務時間外(帰宅後や休日を含む)に行わざるを得ない状況は変わっていないため、調査の結果がますます勤務実態とかけ離れた内容になっています。

 この調査がもはや形骸化していることは県教委にもいくらか自覚があるようで、「提言R7」に向けてさらなるアイデアを求めるため今回の「意見交換部会」が発案されたのかもしれません。しかし、ごく一部の校長や教員の「顔出し」での意見交換や情報共有では、成果を期待すること自体無理で、実際に「時間外で残っている教員の意識改革が必要」「勤務時間外の電話対応に音声ガイダンスを導入」「外部団体への作品募集方法の検討を要請」などが出た程度で、いずれも目新しさはなく効果も期待できません。

 現状の多忙化解消には、「教員が担当する子どもの人数削減」と「抜本的見直しによる業務の大幅削減」しかないことは、この問題が取り沙汰される前からわかりきっていたことなのに、それに着手せず「教員の意識改革」を振りかざして教員の自信を喪失させてきたツケが学校の慢性的な人手不足に拍車をかけ、教職を志す若者をここまで減らす現状を招いてしまったのです。すでに取り返しのつかないところまで達した感のある現状ですが、それを認めようともしない文科省や県教委の責任は大変大きく、今後の展望は果てしなく暗いものです。

 これまでの各種調査や「提言~」の発出などの取組自体が、県教委にとってまるでルーティンワーク化していることには呆れますが、それ以上に、「働き方改革」の名の下に無用な意識改革を一方的にせまり人事評価の一指標として利用するなど、教員の意欲をそぐ愚策でしかありません。

 前回7月の「ちょこっとコメント」では、「主体性」を連呼する県教委のご都合主義と主体性のなさを指摘しました。それに加えて、ことある毎に身勝手な意識改革やDX化を闇雲に迫り、教職員の内心を高みから支配し評価をくだそうとする県教委の姿勢は決して許されるものではない、と私たちは考えます。

・全国学力・学習状況調査について

 4月に行われた「全国学力・学習状況調査」の結果が例年通りの形式で報告されました。

 一昨年度ある委員からの「(調査の)やりっぱなし批判」に対応したためか、昨年度は結果分析委員会に「教科分析部会」と「質問紙調査分析部会」を設置し、9月実施の「授業改善説明会」に資することにしたようです。これらの動きから、「国平均との比較」のみに終始していた今までの分析資料から脱皮した内容を私たちは密かに期待しましたが、分析中とはいえ書式・内容共に全く変化はありませんでした。担当課長による資料の説明でも「全国平均を上回ったのは~」が繰り返された挙げ句、ある委員から「全国平均を上回るとなんか良いことはあるのか」などの発言があり、それに対する「たくさんの項目からここを頑張ったとか焦点を当ててそこが上がると学校の先生はうれしいんで~」「いくつかの項目に分けて、今ちょっと分析しているところ~」などの説明からは、およそ客観的・科学的とは縁遠い「分析」の様子が想像できます。また、ある項目を取り上げて「まさに群馬が目指していることとぴったり~」「重要な項目がしっかり上がって来ている~」などと興奮気味な委員の発言には、失笑を禁じ得ません。

 調査の構造上、経年比較や科学的分析もままならず、現場の負担ばかりが大きく、県別順位のみが世間から注目されるこの調査の無効性は、私たちだけでなく群馬県非認知教育専門家委員会の中室牧子氏をはじめ多くの識者も指摘しています。 (以上)

2024.8.26