群馬県教委10月会議を傍聴して

・公立学校教員選考試験について

 7月の一次選考・8~9月の二次選考を経て来年度採用の教員選考試験合格者の状況が報告されました。受験者総数1627人に対して最終合格者は522人、倍率は3.1(昨年度比0.4ポイント減)とのことです。合格者(採用者)を増やしているものの、受験者が減少傾向(昨年度比554人減)にあることは毎年の資料から明らかです。(7年前の2019年度採用受験者2181人、合格者457人、倍率4.9)

 群馬県に限らず全国的な傾向の教員選考試験の受験者減少が、教員の過酷な労働環境に起因していることは、今さら言うまでもありません。しかし、それに対して文科省や各自治体教育委員会が繰り出す方策が、教員の大幅な業務縮減や待遇改善とはまったく無関係なものばかりのため、受験者減少と教員不足に一層拍車がかかっているのが現状です。

 受験対象者の拡大や新たな特別選考などの制度改変や、教職の魅力発信動画の作成・県内外大学生への広報活動など、群馬県教委も涙ぐましい努力を続けているようですが、そのいずれもが肝心の教員の労働環境改善に切り込む方策とは無縁のため、受験者への訴求力はごくわずかです。それどころか、「特別選考受験者の増加で一般選考受験者が減少し、それに伴う臨時的任用教員の登録者の減少が課題」との担当課長の発言のとおり、群馬県でも教員不足はいよいよ一刻の猶予も許されません。

 他県に見られる受験日の繰り上げや地方試験の実施などの方策が奏効しているとは言いがたく、二次募集をしても採用予定数に達しない自治体さえあるようです。その中で、もし群馬県が全国に先駆けて教員の大幅な増員や業務縮減などの大胆な教育環境の改善に取り組むならば、将来の職業として教職に目を向ける人々は確実に増えるはずです。もちろん、苦境にあえぐ現職教員の声に県教委自らが真摯に耳を傾けることが大前提ではありますが。

 今回の選考試験では「大学等推薦特別選考」を193人の現役大学生・大学院生が受験し142人が合格しました。合格率は実に73.6%で、この制度が始まった昨年度の合格率64.5%(受験者110人中71人合格)を大きく上回る高い合格率です。その一方で、「臨時的任用教員等経験者特別選考」に698人が受験し185人が合格したとのことです。合格率は26.5%となり、先の「大学等推薦特別選考」の合格率73.6%とは天と地ほどの大きな開きがあり、全受験者中の合格率32.1%(受験者1627人中522人合格)さえも下回っています。これは一体どういうことなのでしょうか。すでに教職免許を持ち学校現場で正規採用の教員と同様の業務を日々こなしながら受験勉強にいそしむ臨時的任用教員の受験者は、毎年全受験者の3割以上を占め今回は4割を超えました。しかし、その受験者の4人に1人程しか合格させていない状況を考えると、この特別選考の意味合いや選考基準への疑問をどうしても抱かざるを得ません。新卒者を優遇するのも結構ですが、現在の学校を支えている多くの臨時的任用教員を積極的に正規採用することをまずは最優先すべきではないでしょうか。

 今回の会議では、この教員選考試験や県内公立高校への希望者減少が続く調査結果など現在の群馬県教育の根本に関わる重大な問題が報告されましたが、教育委員からの質疑は一言もありませんでした。このような会議の様子を傍聴しながら、群馬県教育委員会及び教育委員会会議の意義に対する疑問と今後の群馬県教育に対する不安をわたしたちは強く感じます。

・一人当たりの教育支出額について

 10/10~11に行われたOECD国際フォーラム群馬コースの報告がありました。しかし、長時間にわたる報告と参加者の感想からは、「記念イベントの一環としての視察」以上の意味は見いだせませんでした。一方、OECDでは教育に関する詳細な調査を行い、その結果をウェブ上で公表しています。それによると、日本政府の教育への公的支出割合は8%で、OECD加盟36カ国中最も低い7%のギリシャ・イタリアに次ぐ3番目の低さです(㊟1)。その日本では、政府統計調査の一つである地方教育費調査が公表されています。その最新データ(㊟2)では、在学者一人当たりの経費(都道府県からの公的支出)の総額が、群馬県は47都道府県中で小学校992,992円(30位)、中学校1,022,752円(43位)、特別支援学校7,943,462円(21位)、高校全日制1,157,565円(44位)、高校定時制1,586,541円(45位)、高校通信制344,326円(30位)でした。指標としての順位付けには賛否があるものの、実際の支出額で群馬県は中学・高校(全日・定時・通信)で全国平均額を大きく下回っています。

 以上の数値から、教育への群馬県の公的支出が国内外でも最低水準にあることがわかりました。

(以上)

㊟1:Education at a Glance2024 https://doi.org/10.1787/c00cad36-en. Figure C4.3.Distribution of government expenditure by function(2022) 参照

㊟2:地方教育費調査/令和4年度(令和3会計年度)都道府県別集計 教育分野別総教育費 参照

2024.10.29