群馬県教委2月会議を傍聴して
・部活動の地域連携・地域移行について
部活動の地域連携・移行の状況に関する調査結果が報告されました。県内市町村が今年1月に回答した結果を県教委がまとめたものですが、県内全35市町村中、推進計画未策定が65%、検討委員会未設置が37%、実態未把握が43%などの結果から、地域移行の緒に就くことさえままならない状況が読み取れます。2022年12月に国(文科省スポーツ庁・文化庁)が示した「ガイドライン」では、2023~25年度を地域移行の「改革推進期間」としていますが、改革推進の道は遠く険しいことがうかがわれます。
部活動の地域移行に関する課題として、「指導者の確保(97%)」「保護者負担(送迎や費用等)(83%)」「今後の具体的な方向性(77%)」「実施主体の確保(71%)」「中体連や関係団体の大会参加(71%)」「リクスマネジメント(保険加入等)(60%)」を挙げる市町村が多く、国からの「地域移行一択」の指針に対して、今後の方向性さえ見いだせない現在の状況がわかります。
部活動の地域移行が進まない主な理由として、
①地域に部活動の受け皿(人・施設・組織)がない。
②保護者負担(時間・費用)の増大が懸念される。
③地域移行を要望する声(生徒・保護者)がない。
などが考えられますが、①の現状では環境整備に多くのヒト・モノ・カネが必要となり、②により当初から保護者からの強い反発が予想され、③にいたっては地域移行で得られるメリットが想定できないためで、今回の調査結果は当然ともいえます。
しかし、それと共に地域移行を阻む理由として、部活動地域移行の当事者には、
④地域移行による今後の姿がイメージできない。もしくは、
⑤地域移行をしなければならない必然性がない。
ということが、実は大きいのではないでしょうか。
国の「ガイドライン」では地域移行の理由を「少子化」としていますが、「教員の業務過多」が背景にあることは多くの人が認めるところです。識者の中には「部活動の地域移行は現政権が企む公教育の縮小と民営化への試金石」との穿った意見もありますが、教員の逼迫した業務改善の方策として地域移行が期待されていることは明らかです。ところが、④と⑤については生徒・保護者はもちろんのこと教員の一部にもこの認識がありそうです。確かに、現在毎日の部活動に勤しむ人にとって、数年後の部活動の姿を思い描くことや地域移行の意義を俯瞰的に考えることは難しいでしょうし、部活動が学校生活の中心にある人には、地域移行は到底受け入れがたいことかもしれません。ましてや、これまで生徒・教職員があげた部活動の実績を自分の実績のように利用し続けてきた学校管理職や教委・各種団体であればあるほど、わざわざ地域移行をしてまで現状を変える理由は皆無です。
今回の県教委会議での地域移行に関するやり取りでは、現状と乖離し詭弁めいた国の指針を市町村へ闇雲に伝達するだけの県教委の姿勢が露わです。担当課長は、今後コーディネーターを増員し市町村に向けてさらなる周知・指導・助言に努めるとのことですが、「この3年間で全ての部活動で地域移行をするところまでは示していない」との発言からは、本音としての④及び⑤が垣間見えます。
現在、部活動の地域移行は「中学生」の「休日」に限定された話題です。これが今後「平日」や「高校生」にも拡大されるかどうか全くわかりませんが、これまでの経緯や現状を考えると実現は難しいでしょう。しかし、私たちぐんま教育文化フォーラムでは、部活動の教育的意義はある程度認めつつも、生徒の主体的な学習権を保障するために、教育課程外の活動である部活動を学校から切り離すことが必要だと考えます。不登校生徒の激増など様々な教育問題が山積する中、生徒が本来の学習活動に集中し、教員が学校での教育活動に注力できる環境を整えることこそが、学校の根本を問い直すためには最も重要な視点だからです。 (以上)
2024.2.22