群馬県教委12月会議を傍聴して

・教職員の多忙化解消に向けた協議会からの「提言R6」が出されました。昨年の「提言R5」と比較すると記載内容が増えた一方で、具体的業務の「廃止・縮小・ICT化」への訴求が大幅に後退した内容です。

 「提言R5」では、「『廃止』が可能な業務例」や「『縮小・ICT化』を推奨する業務例」を具体的に列挙することで、多忙化解消を学校・教育委員会に迫る姿勢と覚悟が見えたことを私たちも「ちょこっとコメント」で評価しましたが、「提言R6」では「調査において『廃止・縮小・ICT化』の回答が多かった業務例」と「今後、更なる『廃止・縮小・ICT化』が期待される業務例」を挙げるにとどまり、今後の業務の扱いを各学校の判断に委ねるという遠慮気味のスタンスが目立った点で、多忙化解消の意気込みは随分とトーンダウンした印象です。

 また、欄外に太文字で記された「廃止・縮小には、代替案の実施と合わせて検討」や「管理職のリーダーシップの下、教職員一人一人が業務改善の意識をもって組織的に取り組むことが大切」との文言から、教育現場の切迫した窮状をよそに県教委の指導監督者視点がほとばしり出ています。

 さらに、会議で担当課長からの「内容的には周知され実行されれば効果がある。『提言R5』は周知がうまくいかなかったので、『提言R6』では周知を徹底したい」との発言には、傍観者的視点が露わで、「周知がうまくいかなかった」原因を究明する姿勢は見えません。

 会議では、地域行事への教職員の参加に関する話題が占めましたが、教職員の多忙化の原因となっているそれ以外の業務の話題(現在多くの人の関心を集めている部活動の地域移行や余剰授業時間の削減問題、類似した各種調査回答事務の対応、教員による徴収金の業務負担など)については全く触れられることはありませんでした。

 これでは、調査結果を根拠に多忙化解消を図ろうとする「提言R6」の控え目な意図も、「周知」はおろか県民の話題になることさえ難しいと思われます。

 さらに、現在策定中の「群馬県教育ビジョン(第4期群馬県教育振興基本計画)」に係る懇談会では、「『多忙化解消』というのはマイナスのイメージ」「『働き方改革』の方が少し前向き感がある」などの用語イメージに関する議論があった末、「教職員の働き方向上」という用語に落ち着きそうです。これは「ワークライフバランスの向上を含む働き方改革と併せて、教職員の『やりがい』や『意欲』の向上、教職の魅力向上」を意味するのだそうで、これでは今まさに喫緊の課題である教職員の多忙化解消どころか今後の進捗さえ危ぶまれます。

・来春の中卒見込者進路希望調査(第2回)の集計結果が報告されました。

 県内の公立高校全日制・フレックススクールの希望者は11,553人(昨年構成比-1.08ポイント)で、県全体の希望倍率は1.00倍(過去最少倍率。昨年1.01倍)とのことです。その一方、通信制高校希望者を含む「その他希望者」は946人(昨年構成比+0.85ポイント)で、特に、今年度から集計をはじめた「上記以外(広域通信制高校等)」希望者(626人)の増加傾向が、依然として目立ちます。

 通信制高校希望者を高校進学希望者として算入していない調査自体の不備は依然として残るものの、今年度より項目を分けて集計するようになったことは一歩前進と考えます。さらに詳細な調査分析を隣接他県の例にならって行うことも、県教委にとって今後の群馬県高校教育を考える上で必要なことではないでしょうか。

 今回の調査では、希望者が募集定員未満の高校数は35校で、県下の県立高校の半数近くが定員割れの危機を孕む状況であり、全県一学区制を続ける限り一部の高校への集中傾向は変わりません。性急な高校統廃合により地域の過疎化が急激に進んだ他県の例を出すまでもなく、今の状況は県教委自らが作り出したと言っても過言ではありません。

 先述の「群馬県教育ビジョン(原案)」には、「教育の質的水準の維持・向上を図る観点から、県立学校の再編整備を計画的に行います」との文言があり、「教育イノベーションによる再編整備」の名の下に、定員を下回る学校の自然淘汰的な統廃合が強行実施されるのではないか、と私たちは危惧しています。そして、県下のどこでも豊かな学びを公平に享受できることを、私たちは望んでいます。

(以上)

2023.12.29