群馬県教委1月会議を傍聴して
・教員採用選考の改善策について
「令和7年度採用群馬県教員採用選考の改善」として、採用予定人数を小・中・高・特合計で500名程度に増員(前年度470名)することなどが学校人事課から報告されました。少子化が一層進む中での教員の採用人数増員は、教育環境の改善につながるものとして私たちも歓迎したいと思いましたが、どうもそれほど単純なことではなさそうです。今回の増員の理由は「近年の辞退者の増加」とのことから、年度当初に採用予定者の欠員が生じ臨時的任用教員等で急遽補わざるをえない事態が深刻化しているということです。一方で教員採用試験受験者の減少に悩む県教委にとって、この辞退者増はさらに頭の痛いことでしょう。
しかし、このような若者の教職離れの原因は、試験日程などの独自の採用形態だけでなく、これまでの国や県の教育行政がもたらした教員の労働環境悪化に拠るところが大きいと考えます。そして、先行きの見えないこれからの社会に巣立つ若者が自分の将来像を思い描く際に、綿密な情報収集に基づき教職以外のより現実的な選択をするのは当然でしょう。
今後の更なる少子化を見越して正規採用教員を絞り、臨時的任用教員や非常勤職員で何とか定数を埋め、さらには特別免許状などの奇手を繰り出してまで体裁を整えようとする群馬県の教育行政を、若者だけでなく多くの県民が有効性のない失策であるとすでに看破しています。
10月の「ちょこっとコメント」でも指摘したとおり、群馬県の採用試験には600人を超える臨時的任用教員が日々の業務もこなしながら受験しています。群馬県の教育現場を現に支えるこの臨時的任用教員の処遇改善と正規採用を積極的に進めることが、教育の質の維持のために有効かつ早急に着手できる方法だと私たちは考えます。
文科省は昨年5月に教員採用試験の全国一律6月16日実施を軸とした「方向性の提示」を行いました。しかし、試験早期化による受験者増ばかりを追い求め、根源的な問題である教員の処遇改善に直接踏み込んでいないこの「方向性の提示」には、当初から多くの識者・報道機関の批判だけでなく自治体教委からの異論も噴出しました。その結果、文科省に従い来年度6月16日に試験を行う自治体は全国で半数もなく、首都圏・近県の動向を踏まえて日程を決めた群馬県でも7月7日実施とのことです。このことから、政治的思惑が透けて見えた教員免許更新制度や、未だに混迷する大学入試制度を始めとして、絶え間なく現場に降り注ぐ新機軸事業と各種調査など、国が発する教育関連施策という「くびき」から逃れないと、自らの存廃に関わる危機感を自治体自身が持ち始めたということではないでしょうか。
今回の会議では、残念なことにこの件に関する質疑応答は全くありませんでしたが、子どもたちの主体的・対話的で深い学びを実現することを最上位の目標に掲げ、その支障排除のために自らも主体的・対話的で深い思考により充分練り上げた教育行政を群馬県教委には望みます。
・学校統廃合について
在籍児童生徒の減少が原因と思われる小・中学校の廃止・設置が3件報告されました。所管する市町村教委からの報告に限った内容では、委員からの通学方法に関する質問でさえ担当課長は答えられず、県教委としての関与や関心が希薄なことは明らかです。少子化による学校統廃合が、地域の過疎化と少子化を助長させることが各地の事例から実証されている以上、当面の公的財政支出の抑制ばかりをねらったような安直な学校統廃合は、少なくとも現政権による「異次元の少子化対策」とも背反する施策であることは明らかです。
(以上)
2024.1.25