群馬県教委1月会議について

・来年度採用の公立学校教員選考試験の合格者状況が報告されました。

 全区分あわせて498人の採用予定に1,727人が第一次選考に臨み、829人に絞られた第二次選考を経て498人が合格しました。第一次選考受験者/合格者の比率は3.5でした。これは、2018年以降5.3⇒4.9⇒4.6⇒4.4⇒4.5と推移した中でも一段と低い倍率です。

 減り続ける受験者に対して、県教委では今年度から「大学等推薦特別選考」を導入しました。これは、大学からの推薦を受けた大学卒業見込者および大学院修了見込者を対象に第一次選考の「一般教養・教職に関する科目」を免除するものですが、今回の会議でこの特別選考に110人が応募し71名が合格したことが報告されました。

 しかし、公表されている6月の応募状況や今回の合格者状況などの資料から、この特別選考導入による明確な有効性はなかなか読みとれません。受験者減少に何とか歯止めをかけたい県教委の思いは伝わるものの、今回合格した人はこれまでの制度下でも合格していたでしょうし、大学からの推薦の有無が合否に関わることで、かえって受験者の裾野が今後狭まる懸念もあります。

 今年度の募集要項ではこれ以外に「臨時的任用教員等経験者特別選考」の出願条件(経験月数)の短縮、「小論文」の廃止、「実技試験」の精選、「スポーツ特別委選考」の対象拡大などの変更がありました。また、来年度の選考試験から大学3年の受験も可能とのことです。

 他の自治体でも徐々に広がるこれらの制度変更は、全国的な課題である教員不足を背景として、教員のなり手減少に伴う教育の質の低下への対策ですが、このような自治体の動きに対して、今年5月に文科省は「公立学校教員選考試験の早期化・複数回受験等について方向性の提示」を出し、制度変更に伴う新たな課題と関連方策を挙げています。国として各自治体の抱く危機意識を共有しつつ、選考試験改善の方向性を示したものといえます。その中で、「受験者数の増加につなげるためには、教員採用選考試験の早期化や複数回受験等の対応に加え、学校における働き方改革の一層の推進や教師の処遇改善が求められます」としています。ところが、「教師の処遇改善」のための具体策が全く示されていない点で全くの「空証文」に過ぎません。そもそも、現役大学生への門戸開放をアピールする現在の方針には、教職課程というカリキュラム上の制約で自ずと限界がある上、過酷な勤務実態により教員養成大学の学生でさえも教職を目指さないという現実が全く反映されていません。

 国や自治体は、目先の受験者倍増をもくろむことよりも、教育現場の過酷な勤務の解消を最優先で取り組むべきではないでしょうか。

 今年度より出願条件が36ヶ月から24ヶ月に短縮された「臨時的任用教員等経験者特別選考」には、608人が応募し140人が合格しました。全応募者中34%を占めるこの特別選考受験者の合格率は23%であり、「大学等推薦特別選考」受験者の合格率65%とは大きな開きがあります。6月の「ちょこっとコメント」でも両選考応募者数の不均衡と臨時的任用教員の不安定な雇用実態を指摘しましたが、教育現場を現に支えている多くの臨時的任用教員の処遇改善と正規採用を積極的に進めることは、教育の質を維持するために是非とも必要なことだと考えます。

・来春中学卒業見込者の第1回進路希望調査結果が報告されました。

 県内の公立高校全日制・フレックススクールの希望者は12,462人で県全体の希望倍率は1.06(昨年同時期調査:1.05)とのことです。昨年度まで県内外の高校通信制課程の希望者は、進学希望者とは別の「その他の希望者数」に区分されていましたが、今回からは「県内県立高校」・「上記以外(広域制通信制高校等)」に細分された新設の「県内外高校通信制」の項目で集計されることになりました。

 昨年度調査との比較で目立つのは、全日制公私立高校希望者の減(-214人)と、「県内外高校通信制」を含む「(旧)その他希望者数」の増(+110人)です。特に、「上記以外(広域制通信制高校等)」の希望者が近年増加していることが考えられます。また、希望者が募集定員未満の学校数が昨年度の36校を下回る32校になったとはいえ、県下の半数もの高校が定員割れの危機を孕む状況に変わりはなく、一部の高校への集中傾向はさらに激しくなっていると考えられます。

 この機会に乗じて高校教育改革の名の下に定員を下回る学校の統廃合が強行され、社会インフラとしての地域の学校が消滅することは何としても避けなければなりません。そして、来春から始まる一本化入試が、全ての受検生にとって公正で納得のいくものになることを願ってやみません。

(以上)

2023.10.27