群馬県教委月会議を傍聴して

・学校人事課より教職員の多忙化解消に向けた協議会からの「提言R5」について報告がありました。「勤務時間の適正な記録と活用を中心とした労務管理」と「ICTの活用による業務改善の推進」を二本柱とする「提言R4」に続き、今回の「提言R5」では、「廃止・縮小・ICT化」が見込まれる業務例を挙げ、「学校」・「教委」・「保護者・地域・関係団体」のそれぞれに向けた3種の「提言」が示されました。具体的な業務例が列挙されたこの「提言」が、そもそも「提言」といえるかは措くとして、「業務状況等調査」で県内市町村・県立全ての校長及び抽出校教職員からの回答をもとに、「廃止・縮小・ICT化」を進めている業務や今後改善を推進したい業務として多かったものを列挙したもののようです。「適正な勤務時間の記録と活用」を訴えるばかりで、多忙な教職員の精神をさらに責め苛み、具体性をまったく伴わなかったこれまでの「提言」とは一新された内容です。

 確かに、教育長が言うように「教育委員会としてリスクのあることを覚悟」した上で、これまでより一歩踏み出した内容であることは、評価したいと思います。ここで挙げられた具体的な業務例について個々に触れることは省きますが、勤務時間内では到底収まらない膨大な仕事を抱えるあまり、人目を忍んでの仕事の持ち帰りや在校時間管理ソフトの改竄をせざるを得ないような現場の教職員の悲痛な現状を一刻も早く改善するために、この「提言」が実際に機能.....することを願うばかりです。ただ、上記の調査結果は県内の全校長と抽出校教職員の回答(内訳は不明)によるものであり、実際に授業を担当する教職員の意向や校種毎に異なる業務の実情が正確に反映されていないことも踏まえておく必要があります。また、「教育委員会向け提言」は各市町村教委の調査回答をもとにしたもので、教委に関わる業務の「公印押印」「鑑文」の廃止などが挙げられてはいますが、教職員の業務全体を俯瞰したものではなく、教委事務局が過酷な教育現場とは甚だしく乖離した問題意識に留まっていることも明らかになりました。さらに、「保護者・地域・関係団体向け提言」はこれを読んだ人に、教職員の多忙化解消のために多くの行事削減をすることに対する「協力要請」というイメージを持たれる危うさを孕んでいます。

 この「提言」では「廃止・縮小」が可能で推奨するような業務例を数多く挙げてはいても、教委自らが「廃止・縮小」を言い出さない限りそれが容易に実現しない業務が沢山あります。この「提言」が調査の記述多数業務を列挙するスタイルなのも、現場の声を集めただけとの言いわけがあとでできるからとの穿った見方もあります。

 これまで多くの教育課題を各教育現場の裁量と教職員の自己犠牲的な頑張りに頼り、ひとたび問題が起こると「事前に周知したにも関わらず~」と責任逃れをするような教委の体質が、この「提言R5」でも見え隠れするようで、釈然としません。

 上記の群馬県教委による調査とほぼ同時期に全国で実施された「教職員勤務実態調査2022」(全教実施)では、「日常業務中かける時間を減らしたいもの」(複数回答)として「教委などに提出する資料や統計・報告書の作成」が全回答中62.6%、「職種や校務分掌に関わる業務」が34.0%、「会議や打ち合わせ」が33.9%を占めました。また、「長時間過密労働解消に必要なこと」として「教職員の数を増やす」が89.7%、「全体的に業務を縮減する」が66.1%、「受け持つ授業の時間数を減らす」が62.5%となりました。先の群馬県調査とは規模や趣旨は異なるものの、その結果から見える教職員の多忙化解消の方策が、「業務をへらすことと人員をふやすこと」であることは間違いありません。

・これまでの会議でも、質疑に答える各課長の言葉には「周知する」が頻出します。これを発する本人が自らの言葉の「周知効果」をどの程度信じているかはともかく、一度でも言えば「周知」をしたことになるという点で責任を回避できる効果は絶大です。

 ところで、「周知」の語意は、「周知の事実」の用例でも明らかなように「あまねく知ること・知れわたっていること」(広辞苑第6版)なので、「広く(確実に!)知らせる」つもりで使う場合は「周知する」より「周知させる」の方が適切という考えもあるようです(語感がキツくなることは免れ得ませんが……)。ともあれ、一度の発言できちんと相手に理解してもらえることはそれほど多くなく、自分の真意を丁寧に相手に伝える工夫を重ねることが何事においても大事なことだ、と私たちも肝に銘じたいと思います。

・今回の会議で配布された文書に助詞の誤用や地名の誤字が見られました。多様な書類作成に日々あたっている教委事務局の方々の心労もいかばかりかと思いますが、広く知らしめるものであればあるほどわずかなミスが文書全体への信頼性をそこなう場合もあることをお含み置き下さい。

・今回の審議議案は、県立夜間中学の校名決定(第61号議案)と特別支援学校入学時書類の性別欄削除(第62号議案)でした。

(以上)

2023.1.26