群馬県教委3月会議を傍聴して

・今回の会議でも各教育委員から県立学校の卒業式への参加報告が例年どおりあり、4月の入学式にも教育委員の参加が予定されているようです。これでは、「教職員の多忙化解消のための『提言R5』」にある「式典の来賓の精選」が、完全に空文化しているといわざるを得ません。

 教育委員の式典への出席が、単なる来賓の臨席ではなく、数少ない教育現場への視察の意味を持つ機会であるとしても、会議で報告される「素晴らしい式」「落ち着いた雰囲気」「礼がしっかりできる」「立派な挨拶」などの教育委員が壇上から見た感想がどれほど意義のあるものか、はなはだ疑問です。めったにない教育委員の訪問に「異次元の対応」を迫られる現場の多忙を慮るならば、「教育委員の式典参加」は「学校向け提言R5」にある「『縮小』を推奨する業務例」に該当するものとして、県教委自ら範を示して中止してはいかがでしょうか。喫緊の課題とされる「教職員の多忙化解消」への県教委の本気度をこのような機会に示すのは難しいことではないでしょうし、教育現場からの評価も上がるはずです。

・来年度採用の教員募集の概要(変更点)が改めて示されました。教員採用試験の受験者減少の中、採用人数枠の拡大や「大学等推薦特別選考」などの試みが奏功することを、私たちも心から願うばかりです。ただ、有為の人々を教員として迎えるためには、現状の労働環境を改善することが必要かつ有効な方法であることは、毎回この「ちょこっとコメント」でも指摘しているとおりです。

 米国で問題となっている「公教育の崩壊」の到来が日本でも予感される昨今、間口ばかりを拡げて内実が追いつかない教職に対して、魅力を感じて応募する人が急増するとは考えにくいのが現状でしょう。改めて県教委には、さもしさの漂う小手先だけの変更ではなく、現場の教員が教員本来の業務に専念できる環境整備に専心してほしいと考えます。

・「山本一太知事によるJAXAへのトップセールス」の余波と思しき「ぐんま宇宙教育プロジェクト」の説明がありました。

 「宇宙を学ぶ」のではなく「宇宙で学ぶ」とのコンセプトには哲学的な思惟を予感させましたが、公開予定のWEBページの内容はJAXA作成の教材へのリンク集というべきものでした。各教科の単元から関連するJAXA教材へリンクを張ったところが県教委とJAXAとの協働によるものと思われますが、学習内容と教材動画との関連性にいささか無理のあるものも見受けられます。何よりも、リンク先である「JAXA宇宙教育センター」のWEBページの方が同様の操作をより手軽(群馬県版はPDF上のリンク形式だが、JAXA版はブラウザー上での通常のリンク形式)にできる上、そもそもJAXA教材がまだ少ない(全部で7コンテンツ!)ために、壮大な宇宙のイメージに比して物足りなさを覚えます。

・今年度高校入試に関する説明と充足率に関する質問がありました。高校の募集定員に対する後期選抜終了時点での合格者比率である充足率は92.95%とのことで、再募集後にも大幅な充足は見込めないとのことです。

 高校の募集定員が充足していないことへの捉え方を委員に問われて、「中学生が少ない地域があること」・「年によっては集まりにくい学科等があること」・「今年度はこういう結果であったということ」との担当者の答えからは、5年前より5ポイント近く下落した充足率低下への危機意識は微塵も感じられませんでした。また、県教委は県内中学校の今春卒業生の人数さえ把握していない模様で、県内中学卒業生の動向に対する関心や問題意識も希薄なことが露呈しました。

・NPO法人カタリバとの連携による不登校児童生徒への支援について説明がありました。2023年度は試行とはいえ、県内の不登校児童生徒(小中学生)が3,833人(2021年文科省調査より)いる中で3市20人の限定実施では、利用する児童生徒の人選を始めとして多くの課題が想像されます。

・県議選立候補者へのアンケートでの「高校の男女別学」に関する4月3日付上毛新聞の記事がありました。別学をやめるべきかの設問に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」は23人、「思わない」「どちらかといえば思わない」は8人、「どちらともいえない」が30人に上ったそうです。

 県教委では男女共学化を「県民の理解を得ながら、高校教育改革の中で推進する」としている中で、この回答結果には驚きました。県教委の既定方針である「男女共学化」がまだまだ県民の理解を得られていないとも読めますが、「どちらともいえない」と是非を決めかねる県議選立候補者が半数を占めていることには呆れまるばかりです。県教委には、人間の平等や多様性を認め合う社会構築など男女共学が持つ意味について一刻も早く県民全体に理解を得られるよう、先頭に立って努力してほしいと考えます。

 (以上)

2023.4.4