群馬県教委9月会議を傍聴して
・7月の広島県への県外視察に引き続き、9月12~13日に教育長及び次長(指導担当)が大阪府へ出張したとのことですが、国際バカロレア認定校三校を視察したという以外の報告はありませんでした。今後の教育施策に資するための公費による視察なら、それに見合った内容の報告が教育委員会会議でも必要でしょう。
・「教員の働き方改革」をテーマとした1都9県教育委員協議会に参加した委員から、本県の「働き方改革推進の取組」を紹介したとの報告がありました。6月の会議では教員選考試験の動きと関連して「教員の働き方改革」や「多忙化解消」についての意見が出ましたが、今回は「県教委挙げて取り組むべき最優先課題」であるはずのこの話題が膨らむことは全くありませんでした。教育現場は依然として多忙を極め、二学期に入っても病休などの穴を埋めきれないとの悲鳴があちこちであがっている中で、「働き方改革推進」の成果の一端でもこの会議で紹介されると良かったのではないかと思います。
・「令和6年度群馬県立高等学校入学者選抜実施大綱(高校教育課)」の報告が関係所属長からありました。昨年8月の「群馬県公立高校入学者選抜制度の改善方針」に沿って、再来年度入試から従来の前後期2回の選抜を1回とするなどの変更を含むもので、受検生への周知を図るために早めの発表をしたとのことです。
ただ、「実施大綱」の名称が示すように、実施期日や学力検査の時間割が示された以外は、具体的な選抜方法や出題方針に関する説明はほとんど見当たりません。そのため、この入試制度の最初の受検生となる現在の中学2年生や保護者、中学校の先生方にとって、この「大綱」は入試の疑問や不安を解消してくれるものではなさそうです。
さらに、選抜方法を示す「特色型」と「総合型」が、この入試を一層わかりにくくしているようです。この二つの「型」は受検生が選択するものではなく、あくまで各高校が合格者を選抜するためのものだからです。検査項目の比重のかけ方や型毎の合格者比率などは、それぞれの高校があらかじめ設定し、今年度末までに発表することになるようです。
このように、「入試の一本化」と並ぶもう一つの柱である「多様な観点での選抜」の内実を県教委は各高校に丸投げしたわけですが、これによる問題点について県教委では考えていたのでしょうか。受検生の動向も掴めぬままに再来年度選抜基準を設定することが求められる高校、自分の何がどのように評価されるのか見当もつかぬままに受検に立ち向かうことが求められる受検生、これまでの経験を生かせぬままに受検指導が求められる中学校。このような状況となることが県教委には事前に想定できたはずですが、何の顧慮もないまま上記の「改善方針」を発表しました。
私たちぐんま教育文化フォーラムでは、昨年6月の「改善方針(案)」に対するパブリックコメント(注)で「(二系統選抜は、合否判定を)ブラックボックス化する」と指摘し、「全県一区の通学区域」や「一日5教科実施の学力検査」と併せて問題点を指摘しましたが、今回の「大綱」でもそれは積み残されたままです。その一方で、「改善方針」に明記された「インタビューシート(志願理由書から改称)の様式見直しの工夫」や「出願手続きの電子化」については、「大綱」では全く言及がありません。別途定める「入学者選抜実施要項」に記載されるのかもしれませんが(9月24日現在未発表)、各高校から出される「入学者案内」も含め、受検の当事者(受検生・保護者・中学校の先生方)の視点に立った丁寧な説明が是非とも必要です。「始動人」なる珍妙な造語や人をモノ扱いするような「人材」という語が、この「大綱」には見当たらなかったことは評価します。
・今回の審議議案は11件で、県立特別支援学校高等部の生徒募集定員を審議(質疑なしで承認)した第22号議案以外は非公開議案でした。さらに、非公開議案10件中9件が「臨時代理の承認」議案でした。「臨時代理の承認」とは、「緊急に処理しなければならない事由が生じ、かつ、教育委員会が招集されるいとまがないとき」に、「教育長が教育委員会の権限に属する事務について臨時に代理する」ものだそうです。補正予算や条例改正に関する今回の議案9件について、それぞれの事情は詳らかではありませんが、すでに臨時代理で処理済みの議案はほとんど質疑なしで承認に至ったものと想像されます。毎月会議が開かれていても、事前に決まった議案を承認するだけの会議では、教育委員会としての機能を果たしているとは言えません。このような議事運営を平然と行う教育長及び教育委員会事務局職員は真摯に反省すべきですし、教育委員は自らの職務を軽んぜられたことに猛然と抗議すべきです。
(注)当フォーラムHP当該ページ(http://gkb-forum.sakura.ne.jp/about/publiccomment210706.pdf)を参照のこと。
(以上)
2022.9.24