群馬県教委月会議を傍聴して

・今回は所属長からの事務報告が3件、審議議案が3件(内、非公開議案が2件)ありました。

・「都道府県・指定都市教育長会議」(4/28オンライン)での文科大臣からの5項目の指示があったことが、教育長から報告されました。その5項目とは、①教員不足に対応した各種確保策の要請、②文科省調査や実態把握を踏まえた給特法改正の検討、③教員による児童生徒への性暴力根絶取組徹底、④学校給食費値上げ懸念に伴う保護者負担軽減の取組、⑤いじめ自死根絶に向けた全教職員の意識徹底です。

・上記5項目中の②については、ある委員より「(給特法改正の検討は)大きな希望」「法改正のきっかけは、ネット署名などにより世論がどう動くかが重要」との声があり、私たちも県民に向けた今後の働きかけに期待したいと思います。ただ、前回の改定(2019年)が「変形労働時間制(休日のまとめ取り)の適用」と、「業務量の適切な管理」という、教員の勤務実態と切実な要望とは全くかけ離れた内容だったことは記憶に新しく、まさしく「文科省の本気度」が問われています。教員の過酷な勤務実態が明らかになることで、法整備や施策検討が進むことは歓迎すべきですが、小手先の業務付け替えや規模縮小程度でお茶を濁すのでは多忙化解消はほど遠く、ましてや教員の意識改革やボランティア依存、無責任な民間委託などに望みをかけたこれまでの責任回避的文科行政を抜本的に改められなけばなりません。県も同様で、「人・モノ・金・時間に限りがある」との言い訳に終始せず、教育を最優先施策に位置づけて積極的なリソース注入を図るべきです。

・委員の多くから1都9県教育委員会全員協議会(5/16オンライン)の報告がありました。ICTの活用法をテーマにした内容だったようですが、文科省担当者からの説明を受け売りで復唱するような報告は不要ですし、「母親の保護者会のよう」と他の参加者をあげつらう報告に関しては「不適切」以外の言葉が見つかりません。

・上記協議会の報告で、ある委員から今後のICT教育に関して子どもたちのコミュニケーションへの心配があり、子どもたちの声にもっと耳を傾けるべきとの意見がありました。至極もっともなことと考えます。未来を担う当事者の声の傾聴こそが、今までの教育施策に欠けていた視点です。

・同じく上記協議会の報告で、ある委員から端末の経年劣化や今後の更新のことばかりが取り沙汰される現状が残念との意見がありました。一人一台端末の運用について、財政面での関心以上に重要なのは、それを使うことによる生徒及び教員への効果の実証であることは言うまでもなく、それがスッポリ抜け落ちた議論が教育委員レベルでも蔓延していることを想像させて、身震いを感じます。

・教員の勤務実態を把握する方法の一つに、群馬県ではパソコンの起動時間による「在校等時間記録ファイル」がありますが、過去にあった改竄への処分事例を挙げて教育長が「事実を知ることが施策の第一歩」との認識を示しました。管理職による改竄は論外であるにせよ、教員自らがパソコン起動時間以外にも行わざるを得ない膨大な業務の縮減に取り組むことが県教委に課せられた責務であり、「特効薬はないので、できることからやっていく」などと言っている場合ではありません。(5月26日付上毛新聞では、デジタル技術を活用して子どもの心身の健康状態を「見える化」する「Gライフログ」なるシステムを来年度小中高全校に導入を目指す、との記事がありました。的確で迅速な支援により、不登校やいじめの早期発見やケアが図られることは歓迎しますが、支援に当たる教員のさらなる負担増も容易に想像されます。)

・ある委員から今春高校卒業生の進路状況について、進学などにより群馬を離れる傾向のさらに強くなったことを心配する発言がありました。コロナにより企業を知る機会が減ったことをその原因として担当課では説明していましたが、そのような就労体験会や説明会など以上に高校生の進路に影響を与えているのは、地元企業の求人状況や保護者の収入の変化、間口のさらに拡がっている大学入学の門戸などではないでしょうか。都市部の有名大学への進学実現一辺倒だったこれまでの群馬の進路指導のもたらしたツケが、多くの若者の群馬離れとなっている気がしてなりません。

・県教委のホームページでは、定例会議の「会議録」が今年2月まで更新されました(5月26日現在)。依然、前年度3月分が未掲載とはいえ、ここ1ヶ月間で5ヶ月分の会議録が掲載されたことになり、事務局担当者の仕事の進捗がしのばれます。ところで、毎回会議冒頭には教育長により「会議録署名人」が委員の中から一人指名されます。そうすると、これまでの会議録は会議終了後程なく(!)作成され、署名に至っているものだと想像できます。

(以上)