群馬県教委6月会議を傍聴して
・6月13日の県内教育事務所長と教育委員との意見交換会の件が、教育長および各委員から報告されました。「働き方改革に向けた取組の現状と課題」をテーマに話し合いがなされたようですが、エリア毎に課題の特色があることや支援の重要性に触れた程度の報告では、働き方改革どころか多忙化解消への道のりが遙か遠いことが思いやられます。
・この会議においていままで働き方改革については、「待ったなしの~」「喫緊の~」という類いの言葉で緊迫性を持って語られることが多かった割に、現状や課題に関する報告はこれまでありませんでした。県の「教職員の多忙化解消に向けた協議会」で議論され、2月10日に「提言R4」が出されましたが、これに向けた具体的な取り組みが紹介されることもまだありません。ある委員の「教委や事務所の積極的な発信で、働き方改革への理解が進む」との意見には思わず首肯したくなりますが、取り組みそのものが進んでいないとするなら、発信の意味も皆無です。そもそも、「勤務時間の適正な記録と活用を中心とした労務管理」と「ICTの活用による業務改善の推進」を二本柱にした「提言R4」ですから、教員の労働環境が劇的に改善される見込はなく、それどころか、持ち帰り仕事や休日出勤など人目に隠れて業務をせざるを得ない現状がますます深刻化していることがうかがえます。
・所属長からの報告として、「教員選考試験応募状況」「いじめ防止フォーラム」「全国学力・学習状況調査の解説動画」「コロナ感染の影響による学級閉鎖状況」「子どものマスク着用」「令和3年度研修実施結果」についての報告がありました。
・上記の報告の内、教員選考試験の応募人数が前回比240人減の3、9倍(前回4.9倍)になったことを受けて、教師のやり甲斐や醍醐味を高校生や社会人など幅広く伝えることを求める意見がありました。この件に関して「人材奪い合い時代なので、働きやすい環境を作れなければ人は来ない」との意見もあり、先の「働き方改革」と表裏一体をなしていることが示されました。教員採用試験応募者の低迷を解決する方策として、「教職のやり甲斐・魅力の発信」を口にする委員・事務局職員が、揃って教職経験者であることは理解できないことでありませんが、教員の労働環境改善なくして解決策はないことを議論の大前提に置く必要があります。「魅力発信云々」は、この場合もはや周回遅れの懐旧譚でしかありません。
・「全国学力・学習状況調査」の解説動画作成に関して、「全国学テ」が「やりっぱなし」になっているとの課題が委員から示されました。実施には膨大な労力が費やされるこの「全国学テ」ですが、2007年の開始以降、主旨である「学力向上」と「指導改善」にどのくらい効果があったか今のところ明確な検証もされていません。それどころか、正答ランキングを教員いじめに利用しようとする輩も出てきて物議を醸している有様です。小6・中3生の年間カリキュラムとは無関係に行われる「全国学テ」の解説を、わざわざ授業で行う余裕は今の学校にはなく、やりっぱなしになるのは仕方のないことです。それより、4月19日実施の問題解説動画を6月末に群馬県教委が配信したところで何の速報性もなく、塾での解説はとっくに済んでいるものと思います。この解説動画に限りない賛辞を送り「見るのが楽しみ」とおっしゃる委員は、実施直後に国立教育制作研究所から発表された解説をごらんになる方が早かったのではなかろうかと思います。
・夜間中学が伊勢崎に設置されることが決まったことは、全国でも外国籍の住人の多い(全国3位)群馬県にとって、遅きに失したとはいえ喜ばしいことです。せっかく設置するのですから、利便性もさることながら、教育の質を確保するための準備を早急に進めてほしいと思います。また、夜間中学が県内に一校できたからといって、外国籍の子どもたちの対応がなおざりになるなどの問題は解決しません。真摯に取り組む姿勢が問われるところです。
・今回の審議議案は5件。そのうち公開議案は2件でした。
1件目は、第10号議案「群馬県立学校の課程、学科、生徒定員等に関する規則の一部を改正する規則について」(高校教育課)。2件目は、第11号議案「令和5年度群馬県立高等学校生徒募集定員について」(高校教育課)です。これはいずれも、来年度の中学校卒業見込者数が277人減ることを受けて、前橋東・高崎東・伊勢崎・伊勢崎清明の募集定員を各1学級計160人減らすことによるものです。今回は学級減ですが、学校統廃合や学科改編の動きはすぐそこまで迫っており、この教育委員会議でもかつて「もっと議論を」との意見がありました。しかし、それ以降も議題に上がることすらないままです。このままでは、議論どころか意見も交わさないまま高校の統合・整理が行われかねません。今回も、質疑応答は一切ないままに議案は可決されましたが、大変憂慮する事態です。
(非公開議案は、「群馬県立図書館協議会委員の任命」・「群馬県学校保健審議会委員の委嘱」・「事務局等職員の人事に関する臨時代理の承認」の3件でした。