群馬県教委月会議を傍聴して

・今年度最初の県教委定例会議ですが報告・審議事項もごくわずかで、学校現場における年度当初の慌ただしさとは別世界のような、いたって平穏な雰囲気の会議でした。事務局参加メンバーの大半が人事異動で交代したとのことですが、事務引き継ぎは遅滞なく完了していると思われます。

・4月8日の高校入学式に出席した教育委員からの報告があり、参加した各委員からの感想が伝えられましたが、卒業式と同様高々二時間程度の入学式への教育委員参加にどのような意味があるのでしょうか。参加保護者の制限もある中で、生徒にとって何の縁もない教育委員の来賓参加に教育的意義を見いだすことは困難です。

・高校入試選抜結果の報告が担当課長からありました。合格者数や各教科の平均点など例年通りの報告に終始し、初めて1.0倍を切った後期選抜や前年度を大幅に上回る定員割れの状況への言及はまったくありませんでした。この点に関する委員からの質疑もなく、高校入試における「地殻変動」のようなこの動きに対する無配慮・無関心がうかがわれます。定員割れには学級・学科減や学校統廃合で対処するというこれまで通りの「再編整備計画」では、均質な教育環境の保証どころか生徒・教職員のモチベーションを含む学校間格差がますます拡がるばかりです。改めて、これまで私たちが提起してきた「少人数学級の実施」や「学区制の再構築」を含む高校教育改革策を早急かつ真剣に議論すべきことを提言します。

・文科省の「地方教育費調査(在校者一人当たりの自治体経費)」(令和2年度版)によると、群馬県の支出額は47都道府県中、小学校が35位、中学校が37位、特支校が24位、高校全日制が36位、高校定時制が42位、高校通信制26位であり、全国平均額を特支校以外の全ての校種で下回っていました。これにより、全国の中でも群馬県は学校への予算措置が少ない自治体であることがわかります。また、県独自の手厚い措置と知事が胸を張る少人数学級関連予算も、2017年度の14.16億円をピークに、2020年度10.87億円、2021年度9.79億円、2022年度8.76億円と減少傾向が続いています。

・全国で2千数百名の先生が足りないことが大きな話題となった文科省による「『教師不足』に関する実態調査(2022年1月発表)ですが、この調査で群馬県の不足教師数は、小学校0名、中学校1名との結果が示されました。この結果に多くの群馬県の先生たちは驚いたことと思います。なぜなら、自分たちの周囲に「病休に入った先生の代わりが見つからない」「管理職も含めて学校全体でなんとか穴を埋めている」という声があちこちの学校で渦巻いているからです。どのように集計したらこのような結果になるのかまったく分かりませんが、少なくともこの調査結果が「群馬県の教師不足の実態」を正確に示していないことは明らかです。さらに、文科省は「教師不足の要因」として、①見込み数以上の必要教師数の増加、②臨時的任用教員のなり手不足を挙げていますが、突き詰めれば、行政がこれまで経済効率を優先させて教職員の待遇改善や教育条件整備を怠ってきた結果です。この調査では全国の教員の雇用形態別内訳も示されました。その結果を昨年度の教育関連職員録によって群馬県立高校の実態と比較してみると、再任用を含む正規採用教員が全国89.59%に対して群馬県78.41%で、実に11%以上の開きがあります。そして、2020年度から「会計年度任用職員」となった非常勤教員は全国3.46%に対して群馬県15.35%でした。つまり、群馬県では正規採用教員の代わりに非常勤教員による授業でなんとかまかなっている実態が明らかとなりました。上記の群馬県の教育予算の低さと併せて、県民全体で現状を認識し新しい方向性を見いだす論議をすることが絶対に必要です。

・今回の会議では6の審議議案がありましたが、第1号議案「令和5年度使用義務教育諸学校の教科用図書の採択に関する諮問について」以外の5つの議案は人事に関する内容のため非公開でした。なお、第1号議案に関する質疑はありませんでした。

・県教委のホームページでは、相変わらず定例会議の「会議録」が昨年9月で止まったままで、今回の4月会議は「概要」すら記載がありません(4月22日現在)。担当者の交替の有無に関わらず前年度事項が未処理のままとなっているこの状態は、年度毎に生徒も教職員も大きく入れ替わる学校現場では決して許されないことです。やはり、事務局の新年度への引き継ぎはまだ完了していないということでしょうか。改めて、この現状が情報公開の観点か

らも明らかに異状な事態であり、「教育長は、教育委員会の会議の終了後、遅滞なく、教育委員会規則で定めるところにより、その議事録を作成し、これを公表するよう努めなければならない」とする「地方教育行政法第14条9項」に、群馬県教育委員会は明確に違反していることを指摘します。

(以上)