群馬県教委4月定例会議を傍聴して

・主体性を育む教育について

 年度当初の抱負が教育長から語られました。曰く、「教育ビジョンの理念実現のための取り組みを加速する。自分で考え、自分で決めて、自ら動き出す、この主体性を育む教育は、自らの責任で決めて動き出すので、他の人との衝突が起きた時に、自ら対話を通して双方にとって良い道を探っていくという力も合わせてつける。主体性とはそういうこと。教育ビジョンでは、子どもは元々伸びる力を持っているから子どもを信じて子どもに任せていこうということが繰り返し謳われている。今後とも子どもを信じて子どもに任せてその主体性を育む取組を実現させて行きたい。各学校では校長先生のリーダーシップのもと、先生方が自校の特徴を活かして子どもを巻き込んで様々な取組が進んでいる。」

 子どもを信じてその主体性を育むことを念頭に日々の教育活動に取り組むことに、私たちは異論はありません。しかし、「各学校で校長先生のリーダーシップのもと、先生方が自校の特徴を活かして子どもを巻き込んで様々な取り組みが進んでいる」と評する教育長の言葉や県教委の姿勢は、上意下達による施策の周知と進捗ばかりが念頭に置かれ、「子どもの主体性」が単なる修飾語の一つに過ぎないことがわかります。

 また、「教員が働きやすく働きがいのある職場にするには教員同士の支え合いが大切」といいつつも、他方では、人事評価制度によって個々の能力と業績を暗黙の内に教員同士で競わせ、物心両面で格差をつけている現状では、職場の同僚性など生まれるはずはありません。

 教職員対象のストレスチェックから「適正な業務量、同僚・上司からの支援、自らの裁量による業務遂行が低ストレスにつながる」との結果が得られたそうで、高ストレスな職場の実態が証明されました。教職員の心身をこれ以上損なわないために、業務の大幅縮減、人員確保、人事評価制度の撤廃など抜本的な改善を早急に行う責任が県教委にはあります。「教職員がいきいきしている学校は、子どもたちも自由に自分を表現している」との教育長の言葉をそのまま受け取るならば、県教委によるこれまでの諸施策が子どもたちや教職員をいきいきさせていないのです。言っていることとやっていることがまるでチグハグです。

・教職員の相談窓口について

 総合教育センターによる「教職員のための相談窓口」が3年目を迎えたそうです。対象者は初任者から採用5年目までで、昨年度は159件の相談があり、採用4年目の32%、中学校の40%が任期別・校種別で最多となり、相談内容は校種の異動や学級経営への不安が多いとのことです。

 県下の初任者から採用5年目の教職員中一年間の相談件数159件というのが、多いのか少ないのか一概に判断できません。一方、病休や早期退職により今年2月時点で43人の教員不足が発生していることが県議会で報告されました(昨年比14人増)。その理由として、「教員不足は多忙化と負のループをつくっていて、一緒に改善を図ることが必要。いずれも特効薬はないが、できることから時を置かずに取り組みたい」との教育長の答弁には、問題の認識はあるものの解決のための具体性はまったくありません。「特効薬はない」と居直る前に、多忙化解消のための業務の大幅縮減など、県教委として「できること」ではなく、しなければならないことを直ちに実行してください。

 また、ある委員から教職員のための相談窓口の対象者に臨時的任用教員が含まれていないことを問われた担当者は、「今のところ臨時的教員には特化していないが、実際には電話相談やメール相談は来ているようだ。パンフレットはある」と答えましたが、採用時の研修もないまま4月から教壇に立っている臨時的任用教員への粗略な処遇が、これまでもずっと続いていたことが明らかになりました。臨時的任用教員への支援体制の整備は、一刻も早く着手すべき課題です。

 これまでの相談内容で代表的なケースやいくつかの相談事例が紹介されましたが、関係者の支援によってうまく立ち直れたケースなどの概要にとどまり、相談にいたるまでの状況分析や解決に向けての考察は行われていないようです。

 それ以前に、相談窓口である総合教育センターは、教職員の任免と今後の処遇を左右する管理職及び教育委員会と一体の機関と見なす教職員にとって、自分の悩みを最も相談したくない場所であることも、県教委は認識すべきです。

 (以上)

2025.4.27