群馬県教委10月会議を傍聴して
・群馬大学附属中学校の公開研究会に参加した委員からの報告がありました。「主体的・対話的な学び」・「ICTの活用」・「個別最適な学び」・「協働的な学び」など今どきの言葉を用いながら当日の授業を賛美する報告でしたが、他の委員からも指摘されたように、実際の授業内容と上記の言葉との関連性が見えてこない内容でした。 モデル校と見なされることの多い附属中学校の公開授業でさえ「交流時間不足」の課題指摘がされるほど、文科省による理念や方針が未消化のまま現場に持ち込まれ、目新しい言葉や手法ばかりが取り沙汰される学校の現状が垣間見えます。そもそも、平日に実施される公開授業に参加できる現職教員などいませんし、当日参加した市町村教委の指導主事や初任研担当者だけでは文字通り現実離れした授業実践や授業研究になるのは当然のことです。そして、このような授業が今後益々ひな型として現場に押しつけられることを危惧します。
・来年度採用の公立学校教員選考試験の状況に関して、年々下がる志願倍率(今年度3.7倍。前年度4.5倍)に鑑み、自らも教員養成に携わる委員からこれからの受験者確保の見通しについて質問がありました。担当課長は「他県に比べるとある程度確保できているが、手を打たないととの状況にあると認識している」として、「教職の魅力の発信」のために大学生への「紹介動画の配信」などを取り組みたいと答えました。しかし、これは昨年10月のこの会議で前任の課長が「プロモーションビデオの作成」という表現で答えた内容と同趣旨であり、倍率低迷の原因分析と具体的な対策が全く進んでいないことがわかります。何より、「他県に比べればある程度確保されている」との現状認識が何を根拠にしたものか不明ですが、群馬の倍率(3.7倍)が全国で図抜けて高いわけではなく(採用人数が同規模の栃木は4.6倍)、そもそも、埼玉(3.0倍)・東京(2.1倍)・千葉(2.6倍)・神奈川(3.3倍)とは採用人数が一桁違うなど、状況の全く異なる他県と群馬を同列に扱うこと自体無理があります。教育長のいう「働き方、多忙化が改善されていく実感を現場の教員が持てるようになることが大切」なのは当然ですが、その「実感」を持てるような積極的施策を行う責務が群馬県教育委員会にはあります。そして、「教員の働き方改革」や「多忙化解消」こそが「県教委挙げて取り組むべき最優先課題」であることを、県教委全員が再確認・再認識すべきです。
・来春中学卒業見込者の第1回進路希望調査結果に関して、ある委員から入学希望者が募集定員を上回った公立高校数が全64校中28校で過去最少(前年度34校/64校)だった原因について質問がありました。担当課長は、学校毎の平均倍率が1.05倍でこれも過去最低(前年度1.08倍)だったことと併せて、中学卒業生の減少(前年度比239人減)と広域通信制高校など多様な進路への希望者増(前年度比147人増)がその原因と答えました。さらに、学校毎の倍率で都市部と中山間部との差がついてきていることを挙げました。これは、全ての高校で通学区を全県とする所謂「全県一学区制」によるものであることは明らかであり、県教委の施策が受検生の都市部への集中を招いていることを示しています。
また、県外全日制高校への進学を希望する生徒(694人 前年度比81人増)の傾向を尋ねられると、個別のデータはないとしながらも、近隣都県への流出は地理的なもので「群馬県に価値がないわけではない」と担当課長は答えました。その根拠は不明ですが、その直後の教育長の「子どもたちにとって魅力ある高校に変えていかなくてはならない」との発言は、群馬の教育施策及び公立高校への群馬県民の視線が正直に反映されているものと考えます。ちなみに、12月の第2回進路希望調査では、学校毎の平均倍率が1.00倍を下回ることがほぼ確実(昨年度第1回1.08⇒第2回1.01倍)ですが、これを機に「高校再編整備」の機運が高まり、多くの高校の存続が危うくなることを私たちは真に危惧しています。県教委による失策のツケを多くの受検生や一部の高校が被るのではあまりに理不尽です。
ぐんま教育文化フォーラムでは、昨年2月の「第2期高校教育改革推進計画(原案)に対するパブリックコメント(注)において、ずさんな「再編整備計画」や入試制度の問題点を指摘し、併せて「全県一学区制の見直し・学区制の再構築」を提言しました。学校間の倍率格差を平準化し、県下の全ての子どもたちが通学するのに無理のない学校の存続と公平な教育を保証するために、全県的な視野に立った「教育の機会均等」実現に向けて県教委が真摯に取り組むことを切望します。
・今回の審議議案は7件で、教員免許に関する規則変更(第33号議案)と育児休業に関する規則変更(第34~37号議案)を審議(全て質疑なしで承認)し、それ以外の2件は人事案件による非公開議案でした。
(注)当フォーラムHP当該ページ(http://gkb-forum.sakura.ne.jp/about/publiccomment210224.pdf)を参照のこと。 (以上)
2022.10.29