◆生成AIの活用と課題について:問題意識は共有されても具体的指針や評価基準は未定
7月29日の地区別教育行政懇談会でのテーマ「教育現場における生成AIの活用状況と課題」について、
・生徒にAIをどう使わせるかについてはまだ研究が進んでいないように感じた
・思考を深める伴走者としての研究や評価のあり方を現場とともに考えていく必要がある
・AIによる成果を現実に落とし込む教育が先生にも求められていく
・AIを特別支援教育に活用する可能性に期待する
・安易な質問には安易な答えが返ってくる
・発達段階に応じたAIの与え方が必要
などの意見が各委員からあり、この懇談会を通じて生成AIについて「便利だから使う」という段階から、教育の目的を踏まえて「どのように使わせるか」を考える段階に移っているという認識が教育委員の間で共有されたことがわかりました。
一方、OECDでは生成AIの教育利用に関する報告書(「OECD Digital Education Outlook 2026」)で、
・学習目的の不在と思考の肩代わり-AIを使ってきれいなレポートや課題を仕上げても、肝心の思考プロセスをAIに委ねてしまうため、AIなしで臨む試験などで本来の学力が発揮できない乖離が生じる
・主体性・考える力の低下-答えが簡単に手に入ることで、自ら深く考える過程や試行錯誤の機会が失われる恐れがある
・情報の信頼性と倫理的リスク-誤情報や著作権侵害、プライバシー・個人情報保護の課題がある
・教育格差や依存の懸念-ツールへの過度な依存や、活用環境・リテラシーの差による格差拡大のリスクがある
など、様々な問題点があることを指摘しています。
しかし、群馬県では生成AIに関して教育現場で不可欠となる具体的な活用指針・評価基準・年齢別の利用範囲など運用上のルールは、現在明文化されていません。「十分注意して使いましょう」という注意喚起が先に立つばかりで全て現場任せの県教委の腰の引けた姿勢が垣間見えます。
確かに、日進月歩する技術の進展に対して明確な基準やルールを示すことは難しいでしょうが、最低限生成AIを何に使い、何に使わないかという線引きを県として学校現場に向けて具体的に示す必要があるでしょう。それには、これまで骨身を削り培った現場の教員の知見を集め、将来を見通した具体的かつ明確な指針の策定に県教委は注力すべきです。
◆全国学力・学習状況調査結果について:県の分析結果と見解に明確なエビデンスなし
7・8月に文科省から発表された今年度の調査結果について、担当課長から報告がありました。例年と同様に全国平均との比較に関するコメントが大半を占めるだけで、文科省が求める教育施策の成果と課題の検証・改善とは程遠い内容です。例えば、今回小学校算数の4領域全てで全国平均を下回ったことの原因分析は深掘りされておらず、反対に上回った教科の数値分析もほとんどありません。
学校質問調査で「近隣の小中学校との連携や情報交換」に関する結果が極端に低い数値だったことへの質問に対して、実際には「やっている」のに質問文の具体的表現から「やっていない」と回答したのでは、との見解が示されました。もしそうなら、推測だけで済ませずなぜ「やっていない」と答えたのか調査するなどデータで検証する必要があるでしょう。
また、学校質問調査で児童生徒の心身に関するICT機器の利用頻度が全国平均を大きく下回った原因について、市町村の予算が限られているからではとの見解が当初示されましたが、情報収集の無料アプリも存在していながら実際の利用に至っていないケースが多いことも説明され、現状把握すらおぼつかずその場しのぎの答弁ばかりが目立ちました。
さらに、「将来の夢や目標を持っている」という回答が多かったことを、「群馬県教育ビジョンの浸透によってエージェンシーを発揮して学ぶ自立した学習者が育っているため」とするなど、分析とは名ばかりであまりに強引な牽強附会に言葉もありません。
県教委では授業改善プロジェクトなどの取組をしていることを強調しますが、それにより子どもの何がどう変わったかを示すデータは見当たりません。
このように群馬県教委の結果分析が論理性を欠き、全国平均との比較に終始する現状では、全国平均を上回ることだけが群馬県の教育政策の成果指標となっているように見えます。しかし、正答率の差が子どもの能力や授業の課題に直結すると考えるのはあまりに浅薄であり、一方で県が推進する非認知能力育成の方針とも矛盾するはずです。
文科省はこの調査の意義を「全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育水準の維持・向上や教育施策・指導の改善に役立てること」としていますが、群馬県ではそのための精緻な分析・検証は県教委レベルでは行われておらず、まして学校での指導充実・改善に役立っているとはいえません。
学校質問調査の中には、文科省の教育施策をいかに忠実に履行しているかがわかる試金石的項目があり、この調査が毎年莫大な金額を使って悉皆で行われる理由も、また群馬県をはじめ各自治体が躍起になって自らの順位を上げようとする理由も、このことと無関係とは思えません。
(以上)
2026.9.2