◆学びを支える人手の不足について:社会収縮への対応に懸念
6月10日に開かれた教育委員と各教育事務所長との意見交換会について、各委員から報告がありました。年内5地区毎に当面している課題などが報告されたようですが、西部教育事務所からは教員の働き方改革に関して今後の労働力確保の懸念が示されたとのことです。その懸念について詳らかな報告はありませんでしたが、教員の多忙化が一向に解消されないまま、学校を支える学習支援員や部活動指導員の募集に応じる人さえも払底している現状が容易に類推できます。
この報告に対して、ある委員から民間企業における労働力不足対策の例を挙げてコメントをしたことが紹介されました。現役世代の人手不足を補うために民間企業では75歳以上のOB社員を活用することでなんとかしのいできたが、あと十年程すればこの所謂団塊の世代が労働現場から消失して一気に人手不足が深刻化し、企業単位での大幅な改変を余儀なくされること。そして、それは学校現場でも同様でありしっかり考えていかねばならない、ということでした。
これは、県教委が文科省に言われるがままに働き方改革と称する勤務管理や統制で個々の教員を締め上げることには前向きな一方、先を見通した教育環境の維持に伴う人的資源の確保にこれまで本腰を入れて取り組んで来なかったことと、学校教育の危機が日増しに迫っていることへの警告ともとれます。
この意見交換会では、通級指導における自校通級の実態と課題(吾妻)、子どもの見取りに必要な教員のゆとりの確保(利根)、外国籍児童の日本語指導員の確保(東部)などの報告があったことも紹介されました。地区毎に異なる課題のように見えますが、子どもの学びを支えるための人手が圧倒的に足りないという点で共通しています。
今回の会議では、減少を続ける県内の市町村立学校の児童・生徒数や学級数(昨年度比-3,474人、-66学級)の報告に対し、委員からの質疑は特にありませんでした。また、公立学校教員選考試験の応募者数について、担当課長は倍率が3.0で昨年度からほぼ横ばいとの認識を示しました。しかし、昨年度比で採用予定者数-11人のところ応募者数が-65人の応募状況を、横ばいとする認識には大いに疑問が残ります。事務報告後の議案として出された来年度の県立高校生徒募集定員については、県全体で-280人(7学級相当)とすることが審議され、一言も質疑のないままこの議案は決定となりました。さらに、会議後の6月30日には県内唯一の学校組合立利根商業高校が再来年度に生徒募集を停止し、2030年に閉校するというニュースが届きました。
このような群馬県全体がやせ細ってゆくような教育インフラの衰退状況を、単に少子化や過疎化などの人口動態や最近の雇用情勢の影響として座視するのではなく、社会や家庭環境の変化から原因を分析し、学習環境の実態を調査し、社会収縮の時代に呼応した県全体の学校教育の再構築を速やかに図ることが、教育行政をつかさどる県教委には求められているのではないでしょうか。
◆またまた「N-E.X.T.ハイスクール構想」について:公教育の役割とは?
先月も触れた「N-E.X.T.ハイスクール構想」ですが、全国から出された拠点校申請の新規採択結果を文科省が6月30日に発表しました。群馬県が申請した4校中3校が拠点校として採択されたようですが、全国で約3千億円の予算を使って3年間限定の財政支援を行い、地元企業と連携した産業創出や、地域に貢献する人材育成のモデルケースを狙った構想とのことです。
私たちぐんま教育文化フォーラムとしては、この構想を産業界の求めに応じて国が主導する高校版「選択と集中」戦略と捉えています。ごく一部の子どもたちだけを産業界にとって有為な「人材」として育成するという考え方が、公教育の概念から最もかけ離れていることは明らかです。その上、少子化と授業料無償化の影響により群馬県でも顕著な「公立高校離れ」の中で、存続の危機にある公立高校を一気に整理するための方便、との穿った見方もできそうです。
群馬県教委は昨年9月に県立高校の在り方に関する検討を県内各地区に委ねる方針を決め、ある地区では早速統廃合計画を地元首長が発表するなど短兵急ともいえる動きが見えます。ここに地元の子どもたちの意向が反映されているのか不明ですが、全県を一通学区とする入試制度にも関わらず、各地区の高校の存廃についてごく一部の「しかるべき立場の人々」の思惑に委ねることは、国の企図する「N-E.X.T.ハイスクール構想」と共に、私たち県民が突きつけられた公教育存続の危機であると考えます。
(以上)
2026.6.30