・教員の働き方改革について
「群馬県立学校の教育職員の業務量管理・健康確保措置実施計画」(概要版)が、今回の会議の議案として出されました。
2025年6月成立の改正給特法に基づき、教員の働き方改革の推進を図るために策定された計画とのことですが、国の指針に則して「質の高い教育と働きやすい職場環境の実現」を図るために、数値目標を具体的に掲げたり、国が示した「業務の3分類」に基づいて削減可能な業務を例示したりして、「実効性の確保」が意識されているようです。
しかし、業務量の管理や健康確保の見直しなどの具体的措置に関して、「~を推進する」などの努力義務レベルの表現が多く、業務削減に向けた計画自体の強制力は強いとはいえません。また、具体策として「在校等時間の把握と公表」「保護者・地域への周知」などこれまで提言されてきた取組が並ぶばかりでは、改善の兆しが見えない現状に対してこの計画の「実効性」におぼつかなさを感じます。さらに、教員の多忙化・長時間労働の根本的な原因である人手不足・業務過多に対して、この計画は現在の人員を前提とした業務の効率化が中心のようで、人員増や外部委託などについてはほとんど言及していません。
この計画にある「本県の状況」では、現状(2024年度)において高校教員の時間外在校等時間は月平均29時間42分であり、設定した目標値は30時間とのことです。また、2025年度実施の教員の意識調査では、ワーク・ライフ・バランスと働きがいに関する満足度がそれぞれ74.4%と80.4%と高い値だったのに対して、目標値はそれぞれ80%以上と85%以上とのことで、一見すると調査結果と目標値に大きな差がない上に、ほぼ理想的な環境が群馬県では実現しているような印象さえ与えます。
しかし、持ち帰り仕事ややむを得ず行う隠れ残業、精神的ストレスをもたらす自宅での保護者対応などがこの調査では調査対象にさえなっていないことは、実際の業務量を管理する上で大きな問題です。その上、管理職による干渉やデータの改ざん、トラブル回避のための過少自己申告も黙認されるような調査結果では、実態を把握するためのエビデンスとは到底なり得ません。それ以前に、調査結果と目標値に大きな差のない「本県の状況」では、改善による効果がほぼ見込めないことを意味します。
上記の調査結果によって県教委が示そうとしている「本県の状況」なるものと、教員の病休・離退職者の増加、ストレスチェックテストの結果からわかる高ストレス者の増加、不登校児童・生徒数の増加、いじめ認知件数の増加、教員採用試験受験者の減少などが示す現在の学校が抱える深刻な実態との間に、天と地ほどの乖離があることは明らかです。
そもそも、「時間外在校等時間調査」をはじめとするこれまでの多忙化解消策が真の実効性をあげているならば、今回のような「業務量管理・健康確保措置実施計画」など策定する必要はない筈です。
中教審や国会で参考人として登壇することもある教育研究家の妹尾昌俊氏による記事「文科省や教育委員会が《教員の働き方の「見えない化」》を加速?「見える化」するはずの旗振り役に足りない視点」㊟では、これまでの在校等時間調査が教員の働き方の実態を把握する手段としては不正確かつ不充分であり、「見える化」を逆に阻んでいる点を指摘しています。つまり、「目標達成のための数合わせ」によって、「見える化が見えない化(地下化)を誘発する」こととなり、「数字は改善しても、実態はそのまま」というパラドキシカルな結果となっているというのです。
群馬県教委では、2020年12月の「教職員の多忙化解消に向けた協議会」でまとめた内容を「提言R3」として発表して以来、毎年度内容を変えながら教職員の多忙化解消の提言を行ってきました。特に、2022年12月の「提言R5」では、学校・教委及び保護者・地域・関係団体向けにそれぞれ「廃止が可能な業務」「縮小を推奨する業務」を具体的に例示するなど、発表の際には平田教育長から「群馬県としては大変攻めた内容」と自負を感じさせるコメントもありました。
今回の「実施計画」が数値管理を軸としたトップダウン型であるのに対して、「提言RX」は実践共有と改善促進を念頭に置いたボトムアップ型といえます。人員増には決して触れない点で共通するものの、現場の納得と行動変容に基づく自主的改善や成功事例の横展開によって実効性を担保しようとする意図がこれまでの「提言RX」には少なからず感じられて、当フォーラムでも評価する声がありました。
しかし、前年度中には発表のあるこの「提言RX」ですが、今日現在までに今年度版である「提言R8」の発表はありませんでした。今後の多忙化解消実現への不安がさらに募るばかりです。
(以上)
㊟:東洋経済オンライン2026年3月26日付(https://toyokeizai.net/articles/-/938318?page=5)
2026.4.3