・教員選考試験の応募状況について
「若者が減っていくのだから応募者が減るのは当然。我々は倍率を上げることを目指すのではなく、いかに優秀でやる気のある人が群馬県を受けてくれるかに注目すべき」これは教員選考試験の応募状況に関するやりとりでの平田教育長の発言です。全体で517名の採用予定に対して昨年度比-113名の1,566人の応募で、倍率も-0.2ポイントの3.0倍(過去最少)となった教員選考試験の現状への切迫感が滲みます。教育長は「このデータを見て『減りました。終わり』ではなく、どうしてこうなったかを考えていかなければならない」と続けますが、担当課長からは「詳しくはまだ分析していない」との説明が繰り返されました。応募〆切から1ヶ月以上経過しても分析は進まず、応募者減の理由は県教委には不明のようです。
昨年度から始まった大学3年生対象の特別選考に関する質疑では、前回の通過者で今回応募しなかった人の事情や今回応募者が急増した理由などについて、憶測の域を出ないやりとりが目立ちました。青田買いとも評されるこの大学3年生対象選考について、「4年次で教職以外への進路変更に伴う採用計画上のリスクも考慮する必要があります」と昨年度6月の「ちょこっとコメント」で私たちは問題点を指摘しましたが、やはりそのリスクが現実味を帯びてきました。他県でも導入を始めたこの制度について、「4年で推薦を受ければいいので、3年で無理に受けることはないのでは・・・」「学生からすると推薦基準が毎年コロコロ変わるので、真面目な子であればあるほど受ける」などのやりとりがあり、県教委が制度によって早くももてあそばれているようです。
これまでも応募者獲得のための施策が一向に奏効せず教員人気の低迷が続く本当の理由は、詳しい分析をする以前にすでに明らかです。「教員の働き方改革がきちんと進んで、先生方がやる気を持って自分自身のゆとりを持ってやりがいを持って働ける環境を作っていくことがまずあって、そういう先生を見ていれば小中高校生も自分も先生になりたいと思う」という教育長の発言にあるとおり、苛烈な教員の労働環境が教員不人気の根本的な原因であり、大幅な業務縮減や人員拡大などの改善なくして現状を変えることはとうてい不可能です。このまま公教育全体が瓦解してしまうことを、私たちは真に恐れています。
・児童生徒向け学習サポート動画について
全国学力・学習状況調査の児童生徒向け学習サポート動画について説明がありました。これは、「学校の課題として、調査の結果が出るまでに時間がかかり、児童生徒が自分自身の学びを振り返る際に調査問題を十分活用できない、出題の意図や問題のもつ価値を見いだせず、授業改善に十分生かせていない」ので、「教育委員会として各学校での児童生徒の学力の定着及び教職員の授業改善を支援する」ために、小中あわせて27本の動画を6月中旬から配信するというものです。結果が出るまでに時間がかかることが「学校の課題」か疑問ですが、教育委員からは「先生方もきっと活用したいと思うだろうし、自分も楽しみに見たいと思う」「今やっている授業を再現しているようなストーリーがある」などの賛辞が溢れました。
しかし、この調査では学力を把握すること自体に無理があるとする教育学者の意見や教育現場への重い負担などを理由に、以前から私たちはこの調査は不要であると表明してきました。
今後この調査はオンラインによる回答方式に切り替わるようですが、児童生徒の学力向上や授業改善に役立ったという明確なエビデンスもないまま、毎年巨費を費やし悉皆調査を実施する根拠は希薄です。さらに、「自分で考えて、自分で決めて、自分で動き出す」ことを旨とした群馬県教育ビジョンと、全国画一問題で行われる調査主旨との方向性の相違も大いに気になるところです。
3年ぶりに県教委が作成した学習サポート動画ですが、児童生徒・保護者向け限定公開のためか、リーフレットにあるはずの二次元コードは今回も傍聴者には公開されませんでした。せっかくの労作ですから多くの方が視聴・活用することを願いますが、山積している教育課題を前に県教委は他にもっとすべきことがあるはずです。
ちなみに、2022年度の学習サポート動画について当時の県教委会議でも、「県独自の動画作成はさすが」「問題の意図を理解する学習の振り返りに極めて有効」と絶賛されましたが、現在までの3年間の再生回数は多いもので1,100回余、少ないもので50数回、と教育現場での活用の程度が容易に想像されます。 (以上)
2025.6.29